• 江戸を学び、江戸で遊ぼう


     第3回目は、どのRPAが自分の会社に適しているかを見極める回です。これが出来れば、少なくとも周りからは「こいつ、侮れないな!」というレベルまでは達しています。または、見えます。今回で最終回ですので、気合を入れて行きましょう。


    今、一番売れているRPAは何?


     まずは、売れているRPAを確認していきましょう。2019年1月から3月にかけての独自調査結果です(間違っていたら、ごめんなさい…)。代表的なRPA製品、5つのみ対象(※)としました。
     国内では、NTT-ATやNTTデータなどが販売している「WinActor」が3000社と言われており、ダントツのシェアです。次に、RPAテクノロジーズ社が販売元の老舗RPAのBizRobo!(※)は、で、1000社ほどの企業に導入されているようです。また、現在急進中のUiPath(米国)も800社(グローバルでは1500社)程度は、いっています。
     一方、国外大手の、Automation Anywhereはグローバルでは1500社で、米国ではシェアNo1ですが、国内では200社に留まっています。また、Blue Prismは、グローバルでは、1000社以上で欧州シェアNo1と発表されていますが、国内導入社数のアナウンスは見当たりませんでした。ただ、両社ともに、アクセンチュアやデロイトトーマツ、PWCなどの大手コンサル会社や大手SIerが掲げていますので、上場企業や大手企業を中心に、大規模に展開しており、販売本数や売上シェアはかなりの比率だと考えられます。


    ※その他にも、Pega Robotic Automation(CRMとセットだと威力を発揮)、WorkFusion RPA EXPRESS(完全無料のソリューション)、NICE(コールセンターに強い)などもありますが、ここでは割愛させて頂きます。

    ※BizRobo!の実体は、Kofax Kapow10(コファックス カパオ 10、米国)です。また、ソフトバンクよりSyncRoid(シンクロイド)という名称でも売られています。


    どのくらいの値段なの?…高いなーと言う前に


     次は、どの程度の価格なのか体感していきましょう。こちらも代表的なRPAに関して、私なりに調査しました。WinActor、UiPath、BizRobo!(SyncRoidの場合)だと、年間50万〜90万程度、Automation Anywhere、Blue Prismだと年間100〜120万円程度となります。なお、実行するだけのロボットだと、20万円程度のものもありますが、プログラミング出来ませんので注意してください。
     ただ、どの製品でも、サーバでの集中管理が必要な場合は、数ライセンスがセットとなり、年間200万〜1000万円程度の金額となります。に加えて、DBを動かすためのWindowsサーバや権限設定などの準備が必要となります。従って、準備期間も費用も跳ね上がります。
     また、先程から、「年間**万円」という表現をしていたのに気づいた方も多いと思います。あくまでも年間の利用料なので注意が必要です。最近では、このような契約形態をサブスクリプション型と呼んでます。 合わせて覚えておくと、「こいつ、やるな!」と思わせることが出来るかも知れません。


    一番優れているRPAは?


     RPAといっても、それぞれの製品の特性にかなり違いがあり、一長一短です。従って、使う環境や局面によって、優れているRPAは、変わります。ただ、適用規模と難易度で見るのが一番わかりやすいと思い、下図のように纏めました。如何でしょうか?



     ついでですが、詳細は、下表の通り、列挙しておきます。面倒な場合、読み飛ばしても構いません。

    No製品名優れている点
    1Automation Anywhereコーディングは自由度が低いものの、部品群がかなり充実しています。また、インタフェースは一見難解ですが、実は簡単です。また、今回紹介するRPAでは唯一フローチャートがサポートされていませんが、近い内にサポート予定のようです。また、レコーディング機能やステップバイステップなどのデバッグ機能も充実しています。米国の金融系を中心に鍛えられたいますので、中央管理機能やセキュリティ面(PCI DSSなど)でのアドバンテージは大きいと思います。
    2Blue Prismオブジェクト指向開発が出来るので、コーディングの難易度が高い(レコーディング機能もない)ものの、一度覚えてしまえば、生産性・保守性ともに優れているようです。また、こちらも欧州市場で通信や証券会社むけに鍛えられていますので、中央管理機能やセキュリティ面(PCI DSSなど)でのアドバンテージが大きいと思われます。
    3UiPath今、最も注目を集めているRPAです。他の製品と比較し、非常に速いスピードで機能改善されています。また、ユーザー同士のコミュニティも活発で、悩みを短時間に解決しやすい形をとっていることも特徴です。コーディングはVBライクなインタフェースで、実際DotNetの関数なども使えるので、Windows系の開発経験者にとっては、非常に分かり易く、生産性が高いものになっています。また、Excelの処理スピードがメモリ内処理のため非常に高速であることも特徴です。また、Citrix向けの機能も充実しているようです。
    4WinActor完全日本語対応の上、レコーディング機能も充実していて、またコーディングを覚えるのもRPA製品の中では群を抜いて容易です。従って、ユーザー部門だけでも導入しやすいと思います。また、機能的にも、Chromeをサポートするなど、他のRPA製品の機能をキャッチアップし始めている上、サーバー管理機能も少しずつではありますが、充実してきています。ベンダーがNTT⁻ATやNTTデータであることも、将来に渡り安心感があります。
    5BizRobo!基本、サーバーのバックグランドで動作します。従って、PCと同じことは出来ません。サポートするアプリケーションであれば、基本、オブジェクト名で解決しますので、安定性抜群です。特にExcelやWebの2つに関しての安定性は群を抜いています。但し、最近ではMiniという、PC単体でも動作するエディションも出ましたので、サポートするアプリケーションも増えてきているようです。

    うちの会社には、どれがあっているのか?


     ここまで来ると、「うちの会社には、どのRPAがあっているのかなぁ~」と気になりますよね。そんな時は、前掲の図を参考にしてみてはどうでしょうか?つまりザックリ以下の事が言えます。

    1.大企業の場合
     統制が必要な大企業又はセキュリティー優先の企業の場合は、現時点では、Automaion Anywhere、Blue Prism又はBizRobo!が適切だと思います。さらに、どれを選ぶかは、強いIT部門があったり、全て開発会社任せで技術力のあるメンバーを容易に集められる場合は、Blue Prism、そうでない場合はAutomation Anywhereが良いかも知れません。また、ある程度用途が限定出来るのであれば、BizRobo!という選択も良いですね。

    2.ITに強い企業
     ITに強い新興企業や開発力のある企業の場合は、価格も安く、開発の自由度が高いUiPathはどうでしょうか?又は、フリーのRPAでも良いかも知れません。さらに、RPAは、オープンソースを使って自作することも可能です。こんなチャレンジもありかもしれません。

    3.部門導入や中小企業
     部門導入や中小企業で、開発要員の調達が難しい場合は、事務要員からの育成が必要となります。その場合は、最も難易度の低いWinactorがお勧めです。これは、その後の保守フェーズでも同じことが言えます。


     以上のように、会社の規模や社員の特性に応じて、どのRPAを選択するかを判断していってください。場合によっては、複数の組み合わせも有りです。但し、現在、RPAはまだまだ進化の途中段階です。今後、劇的に仕様が変わる場合もありますので、その辺りも留意する必要があることもお忘れなく…。


    最後に、でもあまり深入りするのは…


     3回に渡り、出来るだけ簡単にRPAを解説してきました。いや、つもりです。ちょっと小難しい部分もあったと思いますが、ご容赦ください。これであなたもRPAの話題を振られた時、ちょっと気の利いたことが言えるレベルにはなったと思います。
     但し、RPAのプロジェクトを推進していけるようなレベルになったとは、絶対思わないでください。一担当者または小規模であればまだしも、スコープが社全体で、今まで誰もRPAを手掛けていないのであれば、そのプロジェクトは、めちゃめちゃ難易度の高いものだと断言できます。なぜなら、調査だけでも最低3ヶ月はかかり、そこからプロジェクトチームを立上げ、社全体に渡る業務分析やRPAの部分試行、全体の推進方法や製作、テストや完成後の運用方法の設計し、実行に移していきます。結果、数年がかりのプロジェクトとなることも珍しくありません。それは、優秀が外注がいても同じです。開発以外の部分の大半は、自社でやらなければならず、なかなか思うように進みません。
     ということで、折角、ちょっと気の利いたことが言えるようになったのですが、あくまでも入門レベルです。あまり深入りはしないよう気をつけましょう。ただ、難易度が高いということは、逆にRPAは非常に将来性の高いお仕事だとも言えます。ここで踏ん張ってという意思があるのであれば、敢えて止めません。是非チャレンジして、未来を切り開いてください。


     特集「RPA入門
     第1回:RPAって何?
     第2回:RPAの目、RPAの手
     第3回:あなたの会社に適したRPAは?


     


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