江戸時代は、資源が限られていましたので、 物は捨てずに再利用する事が殆どでした。 今だと買った方が安い事もありますが、 当時は再利用せざるを得ませんでした。今日は、江戸のリサイクル事情に関してのお話です。
江戸時代も現在と同じように、紙を再生して使っていました。 紙を漉き返し(すきかえし)て、売っていたのです。浅草の方でやっていたので「浅草紙(あさくさがみ)」とも呼ばれたり、「還魂紙( かんこんし)」と呼ばれたりていました。また、 品質が低く安価な物は、落とし紙として使われていました。 今のトイレットペーパーですね。それにしても「還魂紙」って名前、なかなかひねりがあって面白いですね。
まず、書き損じなどの不用になった和紙は、 「紙屑買い」により、買い取りされます。天秤棒の両端に籠をつけて、「不要な紙はないかー」などと町中を声を出して回ります。町民はその声を聞き、表に出て交換します。現在のちり紙交換と同じですね。こんな時代からあったのですね。その後、「立場(たてば)」とよばれる紙屑問屋に集められます。最終的には、浅草や足立区の近辺に村々で盛んだった 漉き返し屋に運ばれます。
漉き返しの工程は、だいたい以下の通りでした。
このように簡単な工程ですので、 文字や色んなゴミがそのまま残っていたりしていたようです。 寺田寅彦の随筆の「浅草紙」にも、その様子が詳細に書かれていますので、 興味がある方は探して読んでみたらとても面白いです。科学者らしい詳細な観察をしています。
蛇足ですが、「ひやかす」という言葉を知っていますね。「ちょっとひやかしてくる」とか言いますよね。 前述しましたように、 当時は浅草近辺で再生紙が多く作られていました。職人は、 上記のように樽で冷やしている間、何もする事がないので、 近くの吉原まで散歩に出ていました。そして、お金も無いので、格子の向こうにいる遊女をからかうだけで帰っていました。ここから物を買わずに見て帰るだけの事やからかう事を「ひやかす」 と言い始めたとの事です。こんなところに語源があったなんて、 本当に面白いですね。
特集「江戸のリサイクル」
第1回:江戸のリサイクル1…こんな昔に再生紙
第2回:江戸のリサイクル2…灰買いとは
第3回:江戸のリサイクル3…ゴミの行方
第4回:江戸のリサイクル4…江戸の町は化学工場
第5回:江戸のリサイクル5…修理屋
第6回:江戸のリサイクル6(最終回)…回収業者