雑司が谷は、40年近く前、住んでいましたので、非常に懐かしい場所です。
雑司が谷にある鬼子母神(キシモジン(※))は、安産や子育ての神様で、日本三大鬼子母神(※)の1つとして有名です。永禄4年(1561年)に山村丹右衛門という方が掘り出し、天正6年(1578年)にお堂を建てた事が始まりとの事です。なお、現在のお堂は、江戸時代の寛文4年(1664年)に建てられたものを改築してきた非常に歴史的な価値も高いもので、国の重要文化財にも指定されています。
※鬼子母神の綴りと読み方
雑司が谷にある「鬼子母神」の本当の綴りは、実は当用漢字とはちょっと違っていて、鬼の漢字の一角目の点が無いのが正式です。元、鬼なのですが、仏に帰依したのでツノが取れたという意味で点が取られているらしいです。また、読みも本当は「きしボじん」ではなく、「きしモじん」が正式とこのとです。
※日本三大鬼子母神
その他の鬼子母神は、「恐れ入谷の鬼子母神」の口上でも有名な台東区の入谷にある真源寺、千葉県市川市の遠寿院が三大鬼子母神として数えられています。
どちらの駅からても近いです。副都心線の「雑司が谷」を1番出口から出たらすぐに、都電荒川線(※)の「鬼子母神前(こちらはきしボじんと読みます。)」が見えます。この鬼子母神前より、三ノ輪方向に向いて左側の道を進むと、直ぐ二叉路があります。右側のケヤキ並木の石畳を辿って行くと、T字路に突き当たります。そこを左に曲がると、直ぐ鬼子母神のお堂が見えてきます。ほんの4、5分ほどの距離です。
※都電荒川線
荒川区の南千住の三ノ輪橋から新宿区の早稲田までを結ぶ、東急世田谷線と並び、東京都で2つしか残っていない路面電車の1つです。ただ、自動車との併用軌道は、明治通りの1.7kmと非常に短い区間です。「東京さくらトラム」ともいいます。
なお、接続の良い主要駅は、以下の通りです。
・町屋駅前(千代田線町屋)
・熊野前(日暮里・舎人ライナー熊野前)
・王子駅前(南北線王子)
・新庚申塚(三田線西巣鴨)
・大塚駅前(山手線大塚)
・東池袋四丁目(有楽町線東池袋)
・雑司が谷(副都心線)
入ってすぐ左側には、樹齢700年といわれる30mの高さを誇る大イチョウがあります。都内では、麻布善福寺につぐ巨木で、周囲も8mほどあります。このイチョウの木に触れると、子供を授かるといういわれ、「子授けイチョウ」ともよぼれています。
続いて左側には、地主神の「武芳稲荷堂」があります。赤の連続した鳥居がなかなか映えます。
さらに左側には、日本最古と言われている江戸時代の天明元年(1781年間)から続く駄菓子屋の「上川口屋」があります。10時から開いています。おばあさんがやっていて、風情のある駄菓子屋です。懐かしいお菓子がたくさん並んでいます。
続いて左側奥には、金剛不動尊を安置した法不動(ノリフドウ)があります。
いよいよ、本堂の鬼子母神堂です。さすが、江戸からの歴史を感じさせるお堂です。それとなかなか気づきにくいのですが、正面から見ると、屋根とひさしの間に、小さな鬼が居ます。少し距離があるので、よく見えないのですが、なんだかユーモラスな感じで親しみが湧いてきます。
本堂の右手には、鬼子母神の石像もあります。鬼子母神には、インドのこんな言い伝えがあります。昔、夜叉神(ヤシャガミ)の娘の訶梨帝母(カリテイモ)は、結婚し、千人も子供を産んだのですが、近隣の子供を捕らえて食べるということを繰り返していました。
その暴虐ぶりをみかねたお釈迦様は、彼女の末子を隠してしまいます。訶梨帝母が、我が子を探し、嘆き悲しむ様を見たお釈迦様は「千人もの子供の内、一人を失うだけでもこんなに苦しいのに、食われてしまった子供の親の悲しみはいかほどのものか」と諭し、子供を返します。
自分の大きな過ちに気付いた訶梨帝母は、その後、お釈迦様に帰依し、人々から安産・子育ての神の「鬼子母神」として尊敬されるようになったとのことです。
本堂の右側をさらに裏手に回り込むと、鳥居があって、本堂と背中合わせに、「妙見さん」とも呼ばれ親しまれている「妙見堂」があります。社殿には、北辰妙見大菩薩が祀られています。この神様は、北の夜空に輝く北極星のことを現しているらしいです。ここは、住んでいる当時から「なんで本堂と背中合わせのこの位置にあるのだろう」とすごく不思議な感じがしていました。北を向いているのですね。ご利益は、国土や海上の守護の他、多岐に渡ります。
実は、この雑司が谷の鬼子母神は、JR池袋駅からも目白駅からも10分もあれば、着くほどの近さです。こんな都会にあって、こんな空間を手軽に楽しめるのはとても贅沢なことです。また、昔懐かしい駄菓子屋もありますので、お休みの日などに是非訪れてみてください。もちろん、平日でも良いのですが、9時頃から17時くらいの間でないと、閉まっていますので、ご注意ください。また、駄菓子屋さんは10時からのようです。それと、けやき並木のある参道には「すすきミミズク(※)」も販売されていますので、興味ある人は是非訪ねてみてください。
※すすきミミズク
昔、この辺りに母娘が住んでいて、母親が病気になってしまいました。しかし、貧乏なので薬が買えません。娘が悩んで神様にお祈りしていると、「すすきでミミズクを作って、参拝に来たものに売りなさい。」とお告げがありました。そこで、娘が作って境内で売ってみると大好評、薬代を捻出して母親は全快したと言い伝えがあります。